暑い夏の日、少年夏樹は庭の水撒きをしていました。 緑の葉に水滴が光り、とてもキラキラして綺麗です。 こんな日は、何か特別な事が起こるかも知れないと思ったのです。 |
ふと影が夏樹の顔をすり抜けました。 空を見上げると、むぎわら帽子がふんわりと飛んでいるではないですか。 |
夏樹は慌ててむぎわら帽子を掴もうとしました。 |
手に取ると、何故だか一人の少女が目に浮かびました。 これはきっと大切なむぎわら帽子に違いないと…。 |
すると突然、むぎわら帽子が黄金に輝いて、夏樹を包み込みました。 |
ひょこっと一匹の妖精が現れて、夏樹は凄く驚きました。 |
妖精はそんな夏樹に「海に行こう!」と突然言い出したのです。 「なんで海なの?」と答えると、「それはいけば判るよ」というのです。 どういうことだろう? |
その海岸が、むぎわら帽子から発せられる光に包まれて、 夏樹に教えてくれました。 「いかなきゃ!」何故かそう思えて仕方ないのです。 |
妖精はむぎわら帽子に乗ってといいました。 「そんなの、乗れないよ」というと、でも「大丈夫!」 そういうと、むぎわら帽子が動き出しました。 |
夏樹は咄嗟に走り出していました。 そしてドンドン速度を上げるむぎわら帽子を掴んだのです。 |
その途端、凄い光が夏樹を包つみ、まぶしさの中、暖かさを感じました。 |
瞬間、夏樹はむぎわら帽子に乗っていました。「ええ?なんで?」 不思議ですが、夏樹の身体は妖精と同じ大きさになっていたのです。 妖精は構わず、「しゅっぱーつ!」と叫ぶと、むぎわら帽子が動き出しました。 |
夏の大空を飛んでいくむぎわら帽子。風がなんとも心地よいのです。 妖精は「もうすぐつくよ」といいました。 |
前面に大きな海が見えてきました。 夏樹は思わず、その綺麗さに「うわー!」と歓声をあげていました。 |
真っ青な海と空の境目。そこには大きな入道雲が立ちそびえていました。 |
妖精は「ほらあそこ」と指を差しました。 夏樹はじっと凝視して、その方向を見ました。 |
「あ」海岸には一人の髪の長い少女が座っています。 夏樹にもはっきりと見えました。 |
突如、夏樹はむぎわら帽子から落っこちてしまいました。 「うわ!」大丈夫かな? |
少女はその声に反応して夏樹の方に振り返りました。 |
夏樹は尻餅をついて、しばらくは動けませんでした。 「いてててて」 |
すると少女は夏樹に手を差し伸べて「大丈夫?怪我はない?」と心配しながら、 夏樹を気遣い、気が付くと元の自分の大きさに戻っていました。 |
少女の名前は「あすか」。手を引っ張って起こしてくれて、なんだかとっても 恥ずかしいのです。 「どこからきたの?」あすかは不思議そうに夏樹に問い掛けました。 |
夏樹はむぎわら帽子を持ち上げて「この妖精に連れてこられたんだ」というと、 「あ、私の帽子」とあすかが驚いていうのでした。 二人ともキョトンとして、妖精を見たのです。 |
するとさっきまで元気一杯だった妖精は、むぎわら帽子にちょこんと座り込んで、 にこやかな、ぬいぐるみとなっていたのでした。 夏樹とあすかは夏の一コマの冒険と出会いをさせてくれた妖精に感謝したのでした。 |
むぎわら帽子と… おわり |
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